第11回 「インビクタス/負けざる者たち」by 通りすがりの者

↑映画「インビクタス/負けざる者たち」のパンフレット
↑インビクタスの舞台。1995年ラグビーワールドカップのベストトライ集ビデオ、W杯史上初の延長戦に突入した決勝戦はノートライの激闘に・・・
↑南アフリカ優勝を予想して購入したジャージ
 ネルソン・マンデラ。南アフリカのアパルトヘイト「人種隔離政策」をなくすために戦った黒人政治家。身長180pの偉丈夫ながらその人懐っこい笑顔もあってか、27年間閉じ込められていたロベン島の刑務所でも看守たちをひきつける魅力があったといわれている。その後釈放され、全国民による投票で大統領に就任するのだが、その大統領就任式にもその看守たちを招待したそうだ。

 「インビクタス/負けざる者たち」を観てきた。

 かつて南アフリカでは、白人がラグビーをし、黒人はサッカーをしていた。黒人は、白人チームである南アフリカラグビー代表スプリングボクスを敵視し、対戦相手を応援していたという。マンデラ大統領は、このアパルトヘイトの象徴的な存在であるスプリングボクスが国際的なイベントである母国南アフリカでのラグビーワールドカップで勝てば、それが人種間の和解につながるかもしれないと思い、それを実行した真実の物語。

 映画の中でマンデラ大統領は、「スプリングボクス」という愛称と、緑のジャージを残す理由として、「ここで我々が、スプリングボクスと、緑のジャージを拒否すれば、かつての白人がしてきたことの繰り返しになる。それは、アパルトヘイトを廃止し、人種差別のない祖国を創るろうとしていることに反する。」といった趣旨の演説をしていた。つまり、それらを拒否することは、こちらから白人に対して線を引くことになり、それが新たな差別の始まりになるということかと感じた。それらをこの映画では、マンデラ大統領の言う「許し」という言葉で表現されている。

 映画の中でのスプリングボクスは、かなり弱い設定になっていた。アパルトヘイトに対する制裁のために国際試合を拒否されていた時期があったことは確かだが、当時の成績では、唯一対戦した全ての国に勝ち越していたチームであった。1995年のワールドカップ直前の英国のブックメーカーの優勝国ランキングでは、オーストラリアについで、2位にランクされていた。ちなみに決勝戦の相手のニュージーランドは、4位だったはず。

 映画の中のニュージーランド代表オールブラックスは、かなり強い設定(実際のワールドカップのときも強かった)で、大会中の決勝までの対戦成績を流していたが、当然日本代表戦の結果(145‐17)も映し出されていた(会場に笑)。

 当時、眠い目をこすりながらワールドカップを見ていた者としては、映画の中での試合シーンは、すごく懐かしいものでもあった。当時の選手の特徴を捉えた役者を起用していたり、試合内容も実際の試合にかなり忠実な描写がなされていたように思う。

 ただ、プレーヤーの体の大きさや、スピードはもっとあったように感じた。たとえば、マンデラ大統領役のモーガン・フリーマンはかなり大きい人(身長190pぐらい)で、南アフリカのフランソワ・ピナールキャプテン役のマット・デイモンと並んだシーンでは、「大統領でかすぎ!」と突っ込みを入れてしまった。当時の記憶では、エリスカップ(優勝カップ)の贈呈の時、180cmのマンデラ大統領がかなり小さく思ったからだ。

 私個人としては、見所満載の映画だった。この大会に出場していた選手、ユースト・ファン・デル・ヴェストハイゼン、ジョナ・ロムー、ジョシュ・クロンフェルド、イアン・ジョーンズ、アンドリュー・マーテンズ、デイビット・キャンピージ、ジョージ・グレーガンなどなど懐かしい選手を映像の中で確認したい。また、クリント・イーストウッド監督もどこかに映っているとのこと。そちらも気になる。 私の話よりも、一度観てもらえればと思ったのが正直な感想だ。